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日本での茶道の経験

 

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オオタ先生は僕の和菓子の先生だった。先生は日本でも大変有名な和菓子職人で、砂糖と豆から創り出す和菓子はまるで芸術作品のようだった。また、先生はお菓子の研究のために何年も世界中を旅した経歴の持ち主だ。立命館での国際交流プログラムの最後のセメスターの締めくくりに、クラスの全員が茶道を体験するために先生の家に招かれた。それは僕の日本での学生時代の思い出の中で一番印象に残る体験だった。

通常のクラスが終わってすぐ、僕は友達と自転車で烏丸今出川へ向った。そこから京都郊外にある大原行きへの地下鉄にすぐに乗れるからだ。コンクリートの迷路のような地下から抜け出し、やがて僕らの目の前には見渡す限りの緑や丘など自然があふれるの景色が現れた。それほど街から離れていないのにすばらしい自然だった。半年ほどコンクリートに囲まれた都会で暮らすと、ほんの数分電車でゆられたところにある美しい自然を簡単に忘れてしまうのだ。僕らは、写真を撮ったりしながら、先生の家へ向うバスへと乗り継いだ。

細く曲がりくねった道はやっと車一台が通れる程だけど、プロのバスドライバーは慣れたように簡単に進んでいった。時間が経って行くにつれて町からだいぶ離れたところまで来たことを実感してきた。窓の外では、カメラを熱心に向ける僕らを興味深そうに見ている野性のサルがいたり、また目のいっぱいに広がっている田んぼと藁葺き屋根の家々は日本らしさを感じさせてくれた。もうすでにみんな満足していたが、本当の経験はまだこれからだった。

バスは山の奥深く進んで行き、やがてバス停もなくなっていった。もう少しで目印の赤いカバーのかかった車を見落とすところだったけれど、友達の一人が気付いてバスを止めてもらった。

まもなく先生の家の敷地に入って僕らは驚いた。伝統的な日本庭園には竹の塀に石灯籠、大きな陶器の花瓶が置かれ、石の小道がつづいていた。その脇には見たことのないような花がたくさん咲いていて、真っ赤な葉をつけた木々が植えられていた。時折、きれいな緑色をしたかえるが草むらから出てきて僕たちの前を横切った。左右にそれぞれメインの建物があった。一つは伝統的な日本の家。もう一つは、障子で仕切られた大きな畳が敷いてある来客用の家だった。そしてかすかに聞こえる川のせせらぎと鳥のさえずりを聞いていると、人工的に作られた公園などではなく、都会から遠く離れた本当の自然溢れる環境にいるのを実感した。

オオタ先生が藁の草履を履いた着物を着た助手の女性と現れた。短い打ち合わせの後、間もなく茶会が始まった。まず初めに、着物の女性がろうそくの灯りで小さな石の泉へ連れて行ってくれ、そこで最初に左手、次に右手、最後に顔を洗った。そして、這ってやっと入れる程の小さな入り口をくぐって、茶室へと入った。僕たちは円になって正座するように言われた。別のかすかなろうそくの灯りで、助手の女性が隣の部屋で茶の用意をしているのが見えた。

彼女が湯を茶碗に注ぎ、ひしゃくを置く様子をただ見ているだけだったけれど、一つ一つの動きすべてがとても洗練されていて、ほんとうに驚くほど素晴しかった。たぶんその夜一番の素晴しい時だっただろう。ちょっと変に聞こえるかもしれないが、単に水を茶碗に注ぎ、茶を混ぜる単純なその作業をあれほど優雅で上品に行えるのか理解できたような気がした。ただお盆に茶菓子を置いていくだけの作業だけでも5分近くの時間をかけ、茶が出されると5秒くらいでその完璧な調和は終わってしまった。

食べ物が置かれた小さなお盆が運ばれてきた後、僕たちはそのお盆の手渡し方から始まり、異なる種類の食べ物のおき方、礼をする時の深さ、客が去る時の亭主の体を向ける方向など、すべて上品にかつ完璧におこなわれなければいけない事などを先生から教わった。また客も同様にそれぞれの物を受け取る際の作法、食べ方や茶の飲み方、客が障子の外で待っている次の客に終わったことを知らせる合図など決められた作法がある。箸をお盆に戻す時の音は、菓子を取り終え、茶を運んでくる時を知らせる合図だった。

先生は、その茶会で使われた様々な道具についても説明をしてくれた。菓子が運ばれてきた箱は、世界に2つしかないもので、600年以上も昔のものだそうだ。茶さじは100万円以上するが、本当の茶会ではもっと高価なものを使うのだと教えてくれた。僕には緑色の粉をすくうために先が少し平らになったお箸のようにしか見えなかった。先生によると非常に上質な茶さじは600万円もするらしい。

茶会の後、僕たちはメインの部屋へと通された。大きな木のテーブルの上にごちそうが用意されていた。そこに用意された様々な料理の中で、僕が唯一分かったのは枝豆だけだった。でも、その日を締めくくるのには十分に素晴しく豪華な食事だった。

タクシーが到着するまでの一時間程、僕たちは話をしながらすでにお腹は満腹だったけれどビールを飲んだ。僕の日本での生活の中で一番思い出に残る一年にしてくれた本当に素敵な経験だった。

 

 

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