風邪を引いて思い知った “アメリカとの食文化の壁”

冬将軍が猛威を振るっていますが、みなさん風邪など引いていませんか。日本では、風邪を引いた時の食べ物の定番は『お粥』ですね。ところが、『所変われば品変わる』と言うように、風邪を引いた時に食べる物は、国によって違います。今回は、アメリカの風邪を引いた時に食べる物の定番をご紹介したいと思います。

 

当然ながら、アメリカ人には『風邪の食事=お粥』のような発想はありません。では、何を食べるかと言うと、『チキンヌードルスープ』です。各家庭によって若干違いはあるものの、大まかに言うと、チキンスープストックを鶏肉を割いたもの、野菜、麺(エッグヌードルが多い)で煮たものです。鶏肉からタンパク質が取れ、滋養たっぷり。優しい味の身も心も温まるスープです。

 

でも、風邪で胃腸が弱ってる時に、鶏肉なんて!と、思いませんか。消化が大変じゃないのと。そこはガッツリ肉食系のアメリカ人。一説によると、欧米人はアジア人に比べると、元々肉食であった食文化の違いから、より肉を消化する酵素を多く出す体質らしいです。身体の構造が、もう遺伝子レベルで違う訳です。日本人には海藻を分解する酵素があるそうですが、そんなものでは到底太刀打ち出来そうにありません。

 

食文化の違いを裏付ける話を一つ。国際結婚してアメリカに住むM子さん。風邪を引いて発熱してしまいました。家事を何でもこなす心優しい旦那様が、M子さんの体調を心配し、食事を作ってくれることになりました。ベッドの中でM子さんは、お粥に梅干しや、うどんなどの日本で慣れ親しんだ、胃に優しい食べ物が出てくるものだと信じで疑いませんでした。ところが。出てきたのは、何とステーキとホワイトソースのパスタだったのです。旦那さんは満面の笑みでこう言いました。『ハニー、栄養のあるものを沢山食べて、早く風邪を治さないとね!』

 

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出典: https://www.pexels.com/

 

M子さんは、料理を見ただけで胸焼けを感じたのは言うまでもありません。彼女の胃腸の事情なんて、完全に無視。でも、ニコニコした旦那さんが折角M子さんの為に作ってくれた料理です。食べたくないとは言えないのでした。『こんなこってりした料理、食べられるかー!』と、心の中で叫び、どうにかこうにかステーキとパスタを口に運んだのでした。この時ほど、ホームシックに掛かった時はなかったそうです。元々肉食で胃腸が頑丈なアメリカ人は、我々日本人のように、風邪の時でも『胃腸が弱って・・・』と言う感覚とは無縁の人が多いのかも知れません。

 

次にアメリカで風邪を引いた時の定番と言えば、『炭酸飲料』です。しかも、大体『スプライト』か『セブンアップ』と決まっています。ちなみに、これらの炭酸飲料は、お腹が痛い時にも飲むように勧められます。これまた、胃腸が弱っている時に、刺激のある冷たい飲み物なんて正気なの?と耳を疑ってしまいます。これが日本だったら医師に、温かい生姜湯や白湯、若しくは、電解質が良いポカリスエットなどのスポーツ飲料を飲みなさいと言われるところです。

 

ちなみに、アメリカで言うところのポカリスエットと同じ位置付けにある飲み物は、『ゲータレード』です。病気の時に、これを積極的に飲むよう勧める医師もいます。ゲータレードは、所謂スポーツ飲料の草分け的存在です。アメリカのスポーツの試合などで優勝した時に、監督や活躍した選手が、同僚たちから大きなバケツで何かの液体を、頭からかけられているのをテレビで観たことがありませんか。あの液体の正体は、かなりの確率でこれです。お国柄なのか、色も非常にカラフルで、赤や黄色や青などの原色ばかりあります。まるで、かき氷のシロップのような色合いです。しかも、味の方も、フルーツパンチのようなファンキーな味に加え、グレイシアー・フリーズ(Glacier Freeze) など、直訳しても一体どんな味なのか、なんだかよく分からない味まであります。

 

その他に、風邪を引いた時に医師より勧められる飲み物は、『オレンジジュース』と『牛乳』です。どちらの飲み物にも、日本人としては疑問符を抱いてしまいませんか。風邪の予防にミカンは分かります。しかし、風邪を引いた後にオレンジとは、これいかに?しかも、ミカンの薄皮は、消化に時間が掛かるので、胃腸に負担がかかるのでは?でも、アメリカ人からすると、ビタミンCと糖質が豊富な飲み物なので、オレンジジュースは風邪の時にはもってこいとなるようです。

 

では、牛乳はどうでしょう。こちらも、一見消化が悪そうに思えますね。不思議に思って調べてみると、牛乳にはラクトフェリンと呼ばれる成分があり、強力な抗酸化物質なのだそうです。また、免疫力を高めたり、ウイルスを抑えたりする働きがあるとか。どちらかと言うと、風邪を本格的に引いた後より、予防や引き始めに効果が期待出来るのかも知れません。しかし、そこは広大な国土と正比例するように、大らかな性格の多いアメリカ人。細かいことなど気にしないのかも知れません。

 

例え海外暮らしが長くなっても、幼少の頃から身に染みついている食文化だけは、なかなか変えられないものです。むしろ、身体が弱っている時こそ、慣れ親しんだ日本の食べ物が恋しくなるもの。熱でうなされている時に、ステーキを食べるなんて拷問以外の何物でもありません。さて、前出のM子さん。今では風邪を引いた際は、旦那様の食事をやんわり断って自らキッチンに立ち、文化の壁をひしひしと感じながら、お粥を作って食べているそうです。みなさんも風邪などお召しにならぬよう、ご自愛下さいね。

 

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